北陸内観研修所

自分を変えたい

【経営者の内観インタビュー】ミッドランドスクエアシネマ / 中日本興業株式会社 服部徹 社長

【内観体験インタビュー】

会社の研修にはさまざまな種類があります。今回は集中内観研修を取り入れておられる映画興行等を営む中日本興業株式会社の服部徹社長にお話をうかがいました。
自身が2013年から8回もの集中内観を経験し、その中での体験談や会社に内観研修を取り入れた経緯や想い、そして効果などもお話いただきました。

まるで映画のように情景が浮かびました。

Q.はじめての集中内観までの経緯を教えてください。

A. はじめて集中内観に行ったのが、2013年の年末から2014年のお正月にかけてなんですよね。
実際に内観を知ったのは2007年ですから、行動に移すまでに約6年かかってるんですね。

Q. どうして集中内観に行くことを決めたのですか?

A. どうして内観に行ってみたいかと、そこはですね、ある本の中で、仏陀が悟りを開くまでに7日間山にこもったと。いろんな本の中で7日間とあり、何かキーワードになる日数なのかなと。例えば天地創造も、確か7日間だったようですね。自分を見つめるという事は、以前からやってみたかった。実際、自分というのはどういう人間なのか。客観的に見ていったとしても、主観の入る自分が客観的に見るわけですから、本当の意味での客観にはなりづらいですよね。
7日間集中的に仕事だとか、SNSというものから、いわば解放された空間で、じっくり自分を見つめる。自分と向き合うということに対して、やってみたいなという思いがあった。
(集中内観にいくまで)6年経過してしまったのは、本当に7日間も職場を離れられるかという、結局、自分の中で制限をかけていたので、それだけ長くなってしまった。それで、たまたま2013年から2014年かけては、休みがうまくつながって、それほど大きな負担をかけず7日間休みを取れるということで、そこで思い切ったというわけです。

Youtube動画

Q. 集中内観には、何回行かれましたか?

A. 最初の2013年の年末年始から数えると、ちょうど8回です。それで、今、2020年ですから、だいたい、1年に1回。年に2回行った時もあったんですけどね。実は、今年2020年もお盆に行く予定です。今年入れると9回目ですね。
毎年行くっていうのは、1年経ってしまうと、どうしても心の垢っていうんですかね、心が曇るという状態が、自分の中で自覚ができます。ですから、1年に1回くらいは最低でも掃除をしたい。
本当は年に2回くらい行きたいところなんですけど、なかなか7泊8日を年に2回というのは難しくて、今は年に1回ということでやっています。(2022年8月現在は10回)

Q. 7日間の集中内観中、どのようなことを感じましたか?

A. 初めての集中内観の衝撃が一番大きかったんですけど、内観を始めて1日目、2日目、3日目あたりは、ただ過去の記憶を思い出すということばかりで、しかもなかなか思い出せない。同じところをくるくる回るという、思い出せることはいつも同じで、そういう面では、最初の3日、4日っていうのは、「これで本当にできているのかな?」と。 朝5時から夜21時までということで、かなり長い時間、内観をするわけですけど、その中で本当に思い出せることがいかにも少ない。自分の内観の浅さっていうものを感じながらでした。 それがですね、私の場合は遅いんですけど、6日目に近いと思うんですけど、そのぐらいになってくると、記憶が蘇ると言うか、たとえば、母親に対して、父親に対して、いろいろとやっていく中で、1回目、2回目と、あるいは3回目とかですね、同じことをずっと見ていくわけですけど、それが繰り返されることで、自分の中に全く記憶に無かったこと、つまり頭で思い出そうとしたことではない事柄が、ポンと蘇る。

ある場面が頭の中で、まるで映画のように蘇り、そこにいるすべての人達の心の動きも瞬時に感じました。


初めての集中内観のときなんですが、(具体的なことは省きますが)ある場面が、自分の中でポンと、それは映像を見るように蘇るわけです。そこには結構な人数がいるんですね。私もいる。それから(内観している)対象になる人もいる。それ以外の人達もいる。それが映画を観るように、しかも、不思議なんですが、そこにいる人達の一人一人の心の動きも瞬時にわかっていて、自分自身の心の動きも客観的に見てるし、相手の人の心の動きも客観的に見てるという、そういう体験をして、そんなのは初めての事だったのですけどね。 なんと言うか、言葉で表現するのは、なかなか難しんですけれど、映画でもない、映画を超えて、中の人間の心情まで全部わかるわけですから、人間そのもの全てを、ポンとまるごと瞬時に映しとったような、そういう体験ですよね。それは、自分の中では、過去を振り返って、自分自身の間違った思い方、その時、間違って捉えていたことを瞬時に思い出すことができて、まぁ、思い出させられたというんですかね、そして同時に、いかに愛情深さ、愛に満ちているということが理解できた。これも頭の中の理解ではなく、瞬間的にポンと心の中に入ってきて、それが浮かび上がったというような体験ですね。それが第1回目の集中内観で特に思い出すことです。

Q. その体験によって得たものは何ですか?

人に対しても、自分に対しても『赦す』寛容さをわずかながら持てるようになったことと、感謝心の浅さを知りました。


A. 「自分は、まぁ、そこそこ頑張っている。」それから「そこそこやれている。」という、言わば思い上がりと言うんですかね。たとえば、『謙虚であれ』という風にいつも思ってはいるんですけど、本当の謙虚には至っていないなということがわかるわけですね。どれほどその人にお世話になったか、そして逆に言うと自分にとって、嫌な相手だとしても、そのことから自分自身を、言わば、育ててくれるということ、そういうことも感じるようになるわけですよね。自分の至らなさを知るということは、自分以外の人の過ちもその人の成長過程であり、それぞれの状況があるわけですから、自分と違う価値観であったり、どう見てもちょっと問題だよねという人に対してでも、寛容であれるっていうんですかね、そういうところは、少しですけどね、本当にごくわずかですけど、ちょっとだけ『赦す』という、それは人に対してもそうだし、自分に対してもそうですよね。
『赦す』という事が、わずかながらできるようになったのかなということですね。
そして、もう一つは、感謝ということですかね。言葉では、親に感謝するのが当たり前だとか、今ある環境に対して感謝心を持つというのは当たり前だよねと。それに対して否定する人はあまりいないと思うんですよね。じゃあ、自分自身、感謝心を持っていると思っていたんだけど、持っていないことはないんだけど、でも、いかにも浅い。本当に浅い感謝心しかなかった。ということに気づけたというんですか。
つまり自分の愚かさを知って、人の愚かな心・行いを見ても、責める気持ちが少し減ったという事ですかね。それと、感謝の薄い人間であることを知ったという、この2点ですかね。
内観前と後で、自分の中で心が小さいけれど大きく変わったというところです。

Q. 集中内観直後と、時間経過後の変化はありましたか?


A. 集中内観から出て、家に帰る道すがらっていうのは、見え方だとか感じ方が全く違ってるのですよね。日常生活に戻ってくると、徐々に元の自分に戻ってくる。これが3ケ月、半年も経ってくると、ほぼ戻ってしまうわけです。だけど、内観を経験するのと、してないのとでは、そこの境地に至ったという体験は消えないですよね。その心に、かつて経験したということ、その体験は記憶に刻まれるわけですから、そういう心境になったことは消えない。ということは、今現在は元に戻っていても、それを心に持っている、自覚できるというのは、本当はすごく大きいのかなと思います。ですから、間違いなく元に戻っているんだけど、内観をやる前の自分に戻ってるというのは、本当に知らないからそこにあるっていうのと、(内観後の)戻ってるという自覚とでは、驚くほど大きな違いがあるんですよね。だから、「あ、これではちょっといかんな」と、今の自分の心は寛容さ、赦すという心が無くなってるとかね。あるいは感謝心がだいぶ消えてるなとか、気に入らないことに対しての批判心とか、人を責める気持ちがぐっと湧いてくるとか、それは心で感じるわけですよね、日常生活の中で。だけど、その心境をかつて体験してるがゆえに、今の自分の状態っていうのを見るわけですから、そういう面で、あのことが原因でこうなったとか、あの人のこの言葉で自分は気に入らないとか傷ついたということではなくて、いったん原因が外側に向いたとしても、結局、自分の方にベクトルを向ける。自分を見つめるということになりますから、また(内観の心境に)戻せるということが大きいのかなと思います。

Q. 会社の経営者として、会社として内観研修を取り入れて?

A. 会社に内観研修を導入するということに対して、1回目私が集中内観をして、これは確かにいいなと。
内観はすべての人にとっての救いである。だから内観をすることによって、人を責める(自分の心を振り返ったり)だとか、感謝をするということが多かれ少なかれ起こるだろうなと思った。これは会社の研修に取り入れたいなぁと思ったんです。だけど、内観というのは内発的動機、つまり自分の心の中から、「自分を見つめよう。これではいけないな。」と思ったときにはじめて、悩みや何かあるときにそこに(気持ちが)向くとすると、外側から「やった方がいいよ」というのは果たしてどうなのかなと、ちょっと躊躇したんですね。そして2回目、3回目の集中内観までは、個人的に集中内観に行ってました。そして3回目くらいの内観のときに、(内観中)カセットテープを聞くんですが、そのテープの中に北陸内観研修所の前所長の長島正博氏の音源を聞いたんですね。もちろん自ら行かれたとは思うんですけど、長島前所長は尊敬する大学の先生から勧められた。この先生が勧めるなら行ってみようと行かれた。つまり内発的動機だけではないなと。そうであるなら、もしかすると会社っていうのは、社員にとっては生活を安定させるだとか、生活のためっていうのが一つあるわけですよね。だけど本当に金銭以外で、金銭以上に最もプレゼントできるもの、これは内観だなと思い至りました。

これ(内観研修を導入すること)を自分が躊躇するということは、むしろ自分自身の自己保存。それではよくない。本当ではないなということで、1回だけは、背中を押そうということで、内観研修を会社の一番ベーシックな、根っこ、自分自身の根をもういっぺん掘ってみて見るという、最も深いところの研修に位置づけました。

Q. 会社に内観研修を導入して、どう変わっていったか。どうなったか?

A. まずこれは個人差がありますよね。内発的動機ではなく外発的動機で外側からではあるんですけど、たまたまそういう時期である人もいますしね。何かを抱えていた、あるいは、元々何か人生に疑問を持っていたという方にはピタっはまる。
だけど、まだまだそうでない、そういうタイミングでない、時期でない、つまり人それぞれの春夏秋冬があるわけですから、その時期には至っていなければ、タイミングでなければ、それはまだまだ消化できないと思うんですね。ですから本当にまちまちでしたね。2回目以降はアンケートを取って、そうすると「もう2度と行きたくない」というメンバーももちろんいます。「機会があれば行きたい。」「毎年でも行きたい。」という人もあるわけですね。ですから2回目以降は自主的です。

(内観の)深い人が、中にポツポツと現れるわけです。社内で3・4回と内観研修に行ってるメンバーも何人もいます。そうすると『寛容さ』とか『感謝心』とかが自然に出る。つまり全体としての空気がすごく柔らかくなる。それから人に対する優しさですよね。ただ優しいだけじゃなく、人に対して、物事に対して優しさを持つという人が増えてきてるという風には思いますね。ただ、その全体の中でいうと、企業は社会の縮図ですよね。その中でいろんな人がいるわけですよ。そうすると、そこを理解しないとか、嫌だという人もいるわけです。それはそれで排除されるということではないわけですから、そういう環境の中で良い方向に持っていきたいっていう全体の雰囲気ですよね。それは間違いなくできつつあると思いますよ。
ですから、即効性があるかというと、正直、即効性はないと思います。

即効性はないんですけど、5年、10年あるいはもっとかけて、あるいは会社を卒業してから、その人にとって種が蒔かれているわけですから、そこから発芽して花を咲かせて実るまで、その時期、つまり春夏秋冬の時期というのは人ぞれぞれあって、会社としてはそれでいいと思っています。早く花を咲かせて実りをつけていく人が、その中で本当のわずかであってもいいんですよ。わずかであってもそういう人たちが出てこれば、そこはやっぱり変わってきますよね。でも、もっと長期的な視点で見ると、いずれどこかのタイミングで花を咲かせ、実りをつけることになるわけですから、会社という、つまり社会的な器というものでいうと、社会に対して何らかの良い役割を担うことができるんじゃないかなと思うんですね。

Q. 周りの人で内観に行かれて、何か変わったなという出来事はありますか?

A. 社内で内観をして随分変わったなというメンバーは結構いますよね。
周りに対する発言とか変わってきているところがあります。
相対的にいうと、そういう変わったなという人は、言葉に深みがでるというか、自分がこう思うという自分の事だけでなくて、全体の中の調和というものをかなり考えてますよね。それから相手の成長を願うというかね、そういう思いがあると思います。
逆に、気に入らないからだとか、足を踏まれたら腹を立てるだとかの未熟な感情、そういう部分は全く見えなくなってきますよね。
だから怒りを持つにしても、本当にそれではダメでしょという、義憤というか公憤というものを持っているなと思うんですよね。話が深いなと思うんです。
木鶏会(社内での研修)での発言も聞いていると、表面的でない、自分を本当に深く掘り下げている、それからあまり自分を飾らない言葉、自分はこういうことでできていなかったとか、失敗したこととかを素直に表現する。隠さず伝える。だからこそより人に伝わりやすいですよね。そういうことが結構あります。

内観をやることで、『日常、振り返りをする』というのは、我々の中では当たり前になってきていて、内観の中心である振り返りをメインに据えたような勉強会を時々やるんですね。
私自身そうですけど、これは内観ノートみたいなものです。内観があったからこそ、自らを振り返るという、習慣を続けられると思います。
それで、内観がないと外側に目を向けるわけですから、その体験をしたというのは本当に大きいことですよね。それは1回だけのことでなくこれから先も、自分の人生が大きく曲がってたのを、真ん中の中道に戻してくれるというところがあるなと思います。内観は書かずにやるんですけど、書いていくというのも、一つ自分の思いをまとめることになるので、整理できるものですから、これは社内では内観ノート、振り返りノート、反省ノート、自分を育てる育自ノートと言って、やる人が僅かですが増えてきてますよね。内観に出会ったからこそかなと思っています。

服部徹氏が代表を務めるミッドランドスクエアシネマ
中日本興業株式会社
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