面前DVからの克服~家庭内の関係改善と子どもの登校再開~
子どものSOSをキャッチして2度目の内観へ
ある日、不登校になった子どもが、お母さんに「もう一度内観に行ってきて!」と言いました。家族内の暴言に子どもは苦しんでいたのです。
子どもの前で家族に暴力をふるったり、暴言を吐いたりする行為は、面前DV(ドメスティックバイオレンス)と表現されます。目に見える外傷はないため見逃されやすいのですが、目撃することで子どもの心は傷つくのです。面前DVについて詳しくは感想文の後に記載してありますのでご覧ください。
さて、内観に行ってほしいという懇願は子どものSOSサインだったのでしょう。お母さんは、自分の子どものサインをきちんと受入れ、集中内観のために、数年ぶりに来所されました。集中内観終了後、3か月たってから、一通の郵便物が届きました。子どもが卒業したという喜びの知らせでした。お母さんが2回目の内観から帰った後、子どもは登校しだし、小学校卒業式には生徒代表を自ら買って出たという嬉しい内容でした。
今回、お母さんはここ数年の過程を公表することを許可してくださいました。内観を通して、自分が癒される。そして面前DVを自覚し、その行動を改めることで、家庭内の不和が軽減されたことを如実に物語った感想文です。
前期:母親内観体験1回目
<内観の目的>
「昨年、離婚し、子ども二人と私の母と生活をしている中で、母とケンカする度に、幼少期の頃からの思い出が突然、あふれ出たり、子どもの頃の自分に出会ったりしてしまいます。以前から、姉に内観を勧められていましたが、決断できたのは最近です。深く内観したいです」
母親が内観した後、小学校4年生の娘が夏休みを利用して集中内観を体験されました。北陸内観研修所で、最年少の集中内観体験者です。一週間、頑張りました。
今期:母親内観体験2回目
<内観の目的>
「1回目の内観から、3年が経ちました。母との関係は、大きなケンカもなくなり、一定の距離を取ることで、必要以上の接触をなるべく少なくして過ごしてきました。昨年、自身の弱さや寂しさによる行動が出てしまいました。
すると娘が不登校になり、これは母との関係、娘との関係をみなおす良い機会だと思い、内観参加を決断しました。学校での出来事はキッカケで、母親の私との関係性が問題だと思います。私が内観へ行こうと思った、と伝えると、娘は『行った方がいい!!』と言いました。内観を深められるよう努力します」
<母親内観体験2回目内観後の感想文>
集中内観から3ヶ月が経ちました。帰ったその日から仕事が始まり、慌ただしい日常の中で日々、過ごし行くのを、内観しなければと頭によぎりながらも、その時間を集中してとることができておりません。
戻ったその日に、友人の旦那さんがお正月に自殺されたことを知りました。 私は私自身がもっと良くなりたという思いで内観に行き、心の整理ができ、心地よさを感じていました。一方で、彼が心の病でそのようなことが起きていたことを受け止めるのに、私は苦しい思いを感じ、内観に行ったことが一瞬にしてふっとんでしまった有様でした。内観を通して、幼い頃からの振り返りをしたので、友人の子ども達が背負っていくであろう悲しみが、とても辛く、苦しかったのです。
娘の不登校が理由で、自分を見つめ直すために2回目の内観に参加しました。そして、先週、無事に卒業式を迎えることができました。卒業の一ヶ月前より、朝から登校できるようになり、4か月間の不登校から復活できました。卒業式では生徒代表のあいさつを立候補したり、彼女らしさが戻ってきました。
日常内観は、他の事をしながらで、ほんの少ししかできていませんが、私の母に対して怒りを感じる事が全くなく、関係は良好です。口ゲンカもないですし、母に対して自分ができる事を、少しですが行動しています。母に対する怒りがないので、もちろん周りの人に対しても怒りを感じる事はありません。そういう意味では、今、私はとても安定した心の状態であると思っています。2回目の内観は1回目ほどの衝撃的な感動ではありませんが、より深く自分を知れた感じがしました。劇的に変わった事は、自分の中にもありませんが、家族が笑顔で過ごせている事が一番ではないかと思っています。7泊8日の内観、大変お世話になり、ありがとうございました。
筆をとるのに長い時間がかかりました。心より感謝です。
面前DVとは?
心理的虐待のひとつに面前DV(ドメスティックバイオレンス)があります。
どちらかの親が子どもの前で、配偶者に暴力をふるったり、暴言を吐いたりする行為を主に示しますが、子どもの目の前で家族に暴力をふるうことも含みます。
脳科学の研究では、親の怒鳴り声を聞くと、子どもの脳に悪影響が起きるという指摘もされています。自己肯定感の低下も懸念されます。
面前DVについてのリンク子どもが見ている前で親が… 急増する「面前DV」深刻な心の傷
本ケースでは、面前DVへの対処法として内観が有効であったことが
お母さんの感想文から読み取れると思います。